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512BB、F40、360モデナ…誰にも必ずある「思い出のフェラーリ」

512BB、F40、360モデナ...誰にでも必ずある思い出のフェラーリ

クルマ好きを自称する人なら、一度はフェラーリに憧れを持ったことがあるだろう。そして、それは今もきっと“思い出のフェラーリ”として、胸の中のどこかに残っているはずだ。

では、いま頭の中に思い浮かべているフェラーリは、どのモデルだろうか?

人生で最初に出会うフェラーリ

ある人は、「512BB」かもしれないし、ある人は「F355」かもしれない。「テスタロッサ」「F40」あるいは、「360モデナ」「488スパイダー」という人もいるだろう。

そう、“思い出のフェラーリ”は誰にでもある一方、その対象となるモデルはさまざまなのだ。そして、どのモデルが“思い出のフェラーリ”になるかは、どれが“最初に出会ったフェラーリ”だったかが、大きく影響する。

たとえば、スーパーカー世代であれば、「365GT4BB」「512BB」のBB(ベルリネッタボクサー)だろうし、その少しあとの世代であれば、バブル経済の波に乗って日本へも多くが並行輸入されたスペチアーレモデルの「F40」だろう。若い世代ならば「458イタリア」や「カリフォルニア」かもしれない。

フェラーリ458イタリア

フェラーリ458イタリア

スーパーカーの雄であるフェラーリは、いつの時代にも憧れの対象になるモデルがあり、さまざまな“思い出”を創出してきたのだ。

1981年生まれの筆者の“思い出のフェラーリ”は、1999年にデビューした「360モデナ」である。

運転免許を取得した直後に登場したこのモデナは、それまでの「F355」から一気にモダンなスタイリングとなり、2ペダル・トランスミッションの「F1マチック」が主力に据えられるなど、新世代のフェラーリを感じさせてくれたのだ。

フェラーリ360モデナ

フェラーリ360モデナ

1700万円台からという新車価格は、10代の身には絶対的に無理な金額である一方、「メルセデス・ベンツS600Lと同じぐらい」と考えると、「いつかは手にできるかも……」と思えなくもないのだった。新車価格が軒並み3000万円以上となったいまになって振り返ると、夢が見られる時代だったといえる。

1970年代~2010年代まで歴代フェラーリを振り返る

ここからは多くの人の“思い出のフェラーリ”になったであろうモデルを、年代とともに振り返ってみたい。

1970年代: 512BB/512BBi

池沢さとし氏の作による漫画、『サーキットの狼』を中心に広がったスーパーカーブームを知っている世代の人なら、「BB=ベルリネッタボクサー」の存在は強烈な印象を残しているはず。

特に1973年に量産デビューした「365 GT4 BB」の進化版となる「512BB」、そして「512BBi」は、ランボルギーニ「カウンタック」と人気を二分し、日本人の“フェラーリへの憧れ”を決定づけたモデルと言っても過言ではない。

フェラーリ512BB

フェラーリ512BB

F1ゆずりの12気ボクサー・エンジン(実際は180度V型)をミッドシップにレイアウト。排気量を「365 GT4 BB」の4,390ccから、4942ccへと拡大することで、公称最高速度は300km/hから302km/hへ。

ピニンファリーナによる迫力あるスタイリングに加え、こうしたスペックも、スーパーカー少年たちを虜にしたものだ。「512BBi」は、燃料供給がキャブレターからインジェクションへと変わった、生産後期のモデル。

1980年代:テスタロッサ/F40

「308GTBクアトロバルボーレ」や「モンディアル」 「GTO」など、歴史に名を刻む名車が続々と登場したのが、1980年代だ。中でも、鮮烈な印象を残したのは、「テスタロッサ」と「F40」である。

フェラーリ テスタロッサ

フェラーリ テスタロッサ

赤いエンジンヘッドカバーから名付けられた「テスタロッサ」は、「512BBi」の後継モデルとして登場。細いルーバーが刻まれたサイドデッキやリヤグリルが特徴的なスタイリングのボディに、287 kW(390 hp)を発揮する4,943ccの12気筒エンジンを搭載し、1984年に発表された。

公称最高速度は290km/hと前世代の「512BB」よりも低かったが、これは現実に即した数値になったためだろう(512BBは実際300km/hに達しなかったという)。

もう一方の「F40」は、フェラーリ創立40周年を記念して造られたスペチアーレモデル。当時の技術の粋を尽くして作られた、スーパーカー中のスーパーカーだ。

フェラーリF40

フェラーリF40

排気量2,936ccのV型8気筒エンジンは、2つのターボチャージャーを装着し、351.5 kW (478 hp)を発揮。公称最高速度は、324 km/hにも及んだ。

日本での新車価格は、4,650万円とロールス・ロイスよりはるかに高価だった。それにも関わらず、希少性から市場ではプレミア価格で取り引きされ、2億を超える値段でも欲しい人が列を作ったというのは、語り草となっている(いまは2億円では到底、買えない価格になっているが……)。

1990年代:348 /F355/360

「F40」の後継となるスペチアーレ、「F50」も登場した1990年代からは、「348」「F355」「360」という、一連のV8ミッドシップモデルをピックアップしよう(348は1989年発表だが日本発売が1990年のためここに含む)。

フェラーリ348ts

フェラーリ348ts

フェラーリF355GTS

フェラーリF355GTS

V8ミッドシップのベルリネッタ(とスパイダー)は、常にフェラーリの入門モデルであると同時に、もっともフェラーリらしさを体現する形としてラインナップされる屋台骨。冒頭で、筆者の“思い出のフェラーリ”が「360モデナ」であるとしたのも、そうしたフェラーリらしさを強く感じたからにほかならない。

「348tb/ts/スパイダー」「348GTB/GTS」「F355ベルリネッタ/スパイダー」「360モデナ/スパイダー」と、クーペとオープンモデルで進化を続けたこのV8ミッドシップシリーズは、フェラーリに興味を持った人ならきっと、どれかが“思い出のフェラーリ”になっているだろう。

フェラーリ360モデナ

フェラーリ360モデナ

2000年代:カリフォルニア

「360モデナ」の進化系である「F430」が登場したのも2000年代なら、“公道を走るF1マシン”とも言うべきスペチアーレモデル「エンツォ・フェラーリ」が誕生したのも2000年のこと。

エンツォ・フェラーリ

エンツォ・フェラーリ

しかし、ここまでは、どちらかというと“1990年代までの集大成”といった趣だったと言える。それが、2000年代後半になると、現代に向けた変化が現れてくる。その果実のひとつが、2008年に登場した「カリフォルニア」だ。

フェラーリ カリフォルニア

フェラーリ カリフォルニア

よりダイナミックなディテールが取り入れられたボディの下には、V8エンジンをフロントミッドに搭載。さらに、RHT(リトラクタブル・ハードトップ)を備え、「全天候型の2+2」という新たな魅力を開拓した画期的なモデルであった。

こうしたパッケージングに加え、トランスミッションに7速DCTを搭載したこともあり、日常性を備えたフェラーリとして、ベンチャー企業の経営者など、若い層にもヒット。平成生まれの世代なら、カリフォルニアが“思い出のフェラーリ”になっている人も多いのではなだろうか。

2010年代:ラ・フェラーリ/ラ・フェラーリ アペルタ

「カリフォルニア」の進化版である「カリフォルニアT」や、V8ミッドシップの後継である「458イタリア」「488GTB」、4シーターGT(グランツーリスモ)の「FF(フォー)」と、2020年代に続くモデルが続々と登場した2010年代。この時代にもっとも強く光を放ったのは、2013年に登場したスペチアーレの「ラ・フェラーリ」だ。

ラ・フェラーリ

ラ・フェラーリ

「HY-KERS」ハイブリッドソリューション、800ps(フェラーリではCVと表記)オーバーのエンジン、アクティブ制御のエアロダイナミクス……と、さまざまな“フェラーリ初”を搭載した、究極のフェラーリである。

ついに億を超えた新車価格はもちろん、フェラーリから“選ばれし者”にしか購入権が与えられないという販売方法も、このモデルを早くも伝説的なものにした(日本にも数台が存在する)。

さらに、2016年に登場したオープンモデルの「アペルタ」は、「ラ・フェラーリ」を所有している人にしか購入権が与えられなかったという、超希少車である(これも日本にある!)。

ラ・フェラーリ アペルタ

ラ・フェラーリ アペルタ

“思い出のフェラーリ”というには新しいモデルかもしれないが、21世紀のスーパーカー少年にとって、これほど鮮烈なフェラーリはないだろう。

だからこそ語れるエピソードがある

1970年代のスーパーカーブーム時代から2010年代までのモデルを(ごく一部だけでも)振り返ってみると、ベルリネッタもスペチアーレも、どれもが憧れの対象になるだけの存在であることがわかる。

だからこそ、どの世代の人にも“思い出のフェラーリ”があり、語れるだけのエピソードがあるのだ。

最後にもう一度、お聞きしたい。いま頭の中に思い浮かべているフェラーリは、どのモデルだろうか?

写真:Ferrari

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この記事を書いた人

木谷 宗義(きたに むねよし)

自動車編集者/自動車コラムニスト
1981年、神奈川県生まれ。2006年よりフリーランスの編集者/ライターとしてキャリアをスタート。取材・執筆、編集、ディレクション業務のほか、当初よりメディア運営に携わる。現在は自動車編集者として幅広く自動車コンテンツの制作やプロデュースを行うかたわら、自動車コラムニストとして自らも執筆を行う。